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Beppu Photo / 別嬪と温泉 連載第一回

夏の魔物

別嬪と温泉は「別府温泉ルートハチハチ」の番外編です。温泉道にこだわらず、様々な温泉や別府の街で「べっぴんさん」を撮影していきます。

No.01 Credit:
Model / Wakana Takeuchi
Location / へびん湯、鍋山の湯、鉄輪温泉
Photo・Design・Words / 東京神父

※物語は全てフィクションです。
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  • スピッツの曲に「夏の魔物」って
    名曲があるの



  • 色んな考察があるんだけど
    とにかく悲しい曲で



  • それで、私にとって魔物ってなんだろう?
    って考えてみたの



  • 私にとっての魔物は私



  • 言うことなんか聞かないし
    時に人に害を与えるし
    自分自身さえもたぶらかす



  • 厄介なのはその魔物は私だから
    私が死なない限り死なないのよ



  • なんてことを考えた辺りで
    温泉卵が食べたくなって
    誰もいない温泉にでも
    足を伸ばそうと思ったわけ
    浴衣でも着てさ



  • 別府って街は
    どこにでも温泉があるのよ
    ほんとにびっくりするくらい



  • 手ぶらでブラブラしていると
    自然だか大地だかのエネルギーに
    ふと身体と心の力が抜けて
    魔物に呪文が効くようになるの



  • いつもは蓋が上手く閉まらなくて
    閉じ込めておけないんだけど



  • リラックスに身を委ねると
    魔物は沈んだ澱みたいになって
    動かなくなってしまうの



  • 何はともあれ
    この街にいるとね
    救われるのよ
    投げ出さなくてよかったなって



  • 私が生きている限り
    魔物が死ぬことはないんだけど
    私が生きていることが
    何よりも大切なのよね



  • ところで一人になりたくて
    こんな辺鄙な温泉まで来たけど



  • 温泉に浸かっていると
    誰かに話したくなってきたわ
    私の過去とか未来とか
    「いい湯だな」って
    もはや魔法の言葉よね



  • あなたは私と話したい?
    それとも私の中の
    魔物に会いたい?



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