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別嬪と温泉 連載第二回
「本物の浪漫」
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別府温泉ルートハチハチ
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別嬪と温泉
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浪漫なんて言葉が一番似合わない
20歳の小娘が浪漫チックを探して旅に出た
場所は別府っていう温泉街
なんとなく九州の温泉地ってだけで行き先を決めた
とにかく色んな場所を当てもなく歩いて
旅の醍醐味である「新しい出逢い」だけを
求める二泊三日の旅
すっぴん上等、浪漫に殴り込みをかけるつもりだ
この街はとにかく温泉だらけで
ドンキホーテみたいなごちゃごちゃ感があって
楽しさはあれど風情も何もあったものじゃない
京都じゃないのに祇園温泉だったり
東京じゃないのに青山小学校や山の手中学校があったり
最初はそんな風に思っていたけれど
実際に色んな温泉に入ってみて気付いたことがあった
温泉を選んで
言葉を選んで
生活を選んで
人生を選んで
自分が撮りたい景色を選んで
人生も旅も全て選択の連続で
温泉に入って幸せなため息をつく度に
そういう当たり前なことを深く考えて
その当たり前なことがいかに
恵まれていることなのか
そんな当たり前で笑っちゃうような
誰もが知っているようなことを
心で感じてしまって
あ、もしかしたらこう考えることが
浪漫の始まりなのかもとか思ったり
別府に来るまでは
写真に感情なんて写らないと思ってた
この街を撮る度にそうじゃないと知った
この街で撮られる度に体験として腑に落ちた
だから人は写真を撮るんだ
だから人は旅に出るんだ
だから私はこの街が好きなんだ
浪漫がある場所はつまるところ
外側じゃなくて内側
どこかじゃなくて、誰かなんだってこと
私が満ちていく
私が溶けていく
私は誰?私は何?
温泉と温泉街の空気に
考えるのもだるくなっていく
さっきまでせわしいだけだった街が
なんだか愛おしく思えるようになってきた
自分の中で何か変わった?何が変わった?
特に何も変わってない。
自分ではそう思う。
少し、見方が変わったのかも?
そんなほんの僅かな機微に
ハタチそこそこの小娘が気付けるはずもない
なんて自分を卑下することがそもそもおかしいな
あ、そうか、気付いたんだ
自分は自分でいいことに
年齢も肩書きも今の暮らしも全部ひっくるめて
汗や涙と一緒に温泉の中に溶けてしまったんだ
残ったのは私という人間だけ
「本物の浪漫」が知りたくて
ただその衝動のままに旅に出た私
温泉に入りたい私
猫と遊びたい私
最新のスマホが欲しい私
お金をかけてオシャレしたい私
エモい写真が撮りたい私
浪漫を感じたい私
生きる意味を知りたい私
先輩と恋したい私
誰かとSEXしたい私
全部私だ
そんな色々を考えたり
考えなかったりして
ただただ街を楽しんでみた
思いっきり笑って
泣きたい時は泣いた
だんだん柔らかい気持ちになる
普段からストレスもなくて
身体も心も柔軟だと思ってたけど
随分固い価値観に捕らわれていたことに気付く
たったの3日で何が変わるわけじゃないけど
この街に来られたことには意味があると思った
そのぐらい衝撃的だった
特に何があったわけじゃない
ただ人に出逢って心を開いただけ
ただ湯に浸かって心を忘れただけ
多めの食事と
普通の延長と
少しの冒険と
今ここにいる私が私だ
そう気付いた
誰にも否定できない
全力で生命を謳歌する私
愛したくて
愛されたくて
っ愛なんてと
のたうちまわる私
本物の浪漫は
きっと私の生き様そのものだ
No.02 Credit:
Photo・Design・Words / 東京神父
Model / Sky
Location / 茶房たかさき・祇園温泉・竹瓦温泉・ひょうたん温泉・その他内成、鉄輪、北浜など
これ以上を見たい方は「
ふるえろ
」から
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