2025.10.14@大分県国東市国見町「岩倉八幡社」
大分県国東(くにさき)半島にある岩倉八幡社で、毎年10月14日に開催される火祭り。「ケベス祭」は「トウバ」と呼ばれる当番の氏子と、奇妙な木の面をかぶった「ケベス」が、岩倉社の境内で火を巡って争う伝統行事。境内に設けられた燃え盛るシダの山に、ケベスが木で作られた棒を持ってケベスが突入するのを、近くの海で禊ぎをしたトウバが阻止するという起源や由来が不明とされる祭り。国選択無形民俗文化財。
火は生きている
風が触れれば揺れ
水が迫れば息を潜め
人の掌に宿れば
正義にもその逆の
正義にもなる
遠い昔誰かが
その光に手を伸ばした
寒さを追い払い
夜を照らし
言葉より先に
つながりを知った
火は進歩の始まりだった
パンを焼き
鉄を曲げ
夢を鍛えた
それは破壊の力でもあり
同時に祈りの形でもあった
そして今
祭りの夜に灯る火は
ただの炎じゃない
過去と未来を結ぶ「記憶」だ
火を囲む私たちは
いにしえの人々と同じように
温もりに集い
光を見つめ
心の奥で小さく誓う
「燃やすのではなく、照らしたい」と
この火を浴びることで
無常息災を願うのは
神が天にいるからではなく
私たちの中で静かに
瞬いているからかもしれない
言葉よりも深く
理屈よりも確かに
その光はまだ名も持たぬ
祈りのかたちで
私たちの深淵にある魂を
照らしているのだ