手紙人 No.041
ひとみ / Hitomi
「親愛なる森本先生へ」

    師も走る十二月、先生も忙しい日々をお過ごしかと思います。
    何かと理由をつけてはご無沙汰していますが、お元気ですか?
    先生との出会いは私が高校に入学したばかりの四月でしたね。
    「美術部」を目指し一人、今はなき古い校舎の階段をドキドキしながら、
    上ったことを思い出します。
    優しい笑顔の先生に迎えられ
    (笑顔で無茶振りしてくることは後に知ることになるのですが)
    その日から美術室がかけがえのない場所になりました。
    十代の、言葉にできないあれこれをキャンバスにぶつける日々の始まりです。
    あれから二十年、三十五歳になった私は
    十五歳の頃からは想像もつかないほど普通で、
    自由に楽しく生きています。
    キャンバスにぶつけるあれこれは、今はさほどありません。
    というのは、以前頂いたスケッチブックが真っ白なことの言い訳です。
    ごめんなさい。

    そういえばちょうど今日から先生の作品が展示されるのですよね?
    いつもどおりの案内の遅さでまだ詳細が分かりませんが、
    ひとまず勘を頼りに向かってみます。
    でもきっと見つけ出せると思うのです。
    だって、不本意ながらたまたま入学した高校で、
    よりによって一番行くはずがなかった女子校で、
    生涯の師であり友である先生と出会えたのですから。
    また近いうちにお会いできたら嬉しいです。
    何かと理由をつけてはお誘いするので、たまにはお付き合い下さい。
    美味しい物を食べながら今の部活のこと、
    私の仕事のこと、色々お話ししたいです。
    先生が望む場所なら何処へでも行きますよ。
    そのときはきっと、スケッチブックを携えて。

    ひとみ







    手(hand)
    右利き(ボールペン / 三菱鉛筆 [ジェットストリーム 0.5 by LOFT])





    紙(paper)
    高校の部活の顧問宛(レターセット / HALLMARK [186mm×138mm シンビジューム EEP-528-065])





    人(person)
    ひとみ(35歳 / 会社員)


    入筆時間
    数日
    好きな言葉
    袖振り合うも多生の縁
    好きな本
    大槻 ケンヂ「グミ・チョコレート・パイン」
    最後に手紙を書いたのは?
    数日前、お客様に。
    手紙人になった感想
    自分の過去と現在と向き合え有意義でした。
    生まれ変わったら紙となり、
    ジェットストリームの滑らかなインクで
    ローションプレイに勤しみたいです。


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